男性が困った顔を見せ、美桜はベンチの近くで拾ったボールペンのことを思い出す。すぐにかばんの中から取り出し、男性に見せた。

「ボールペンってこれのことですか?」

「あっ、それだ!よかった〜。買ったばっかりだったんだよね。見つけてくれてありがとう」

男性は満面の笑みを浮かべ、美桜の手からボールペンを受け取る。そして、美桜の手には生クリーム入りのチロルチョコが手渡された。

「それ、ボールペン拾ってくれたお礼」

美桜は、手のひらに乗せられた一口で食べられてしまう小さなチョコレートを見つめる。こんなチョコレートを見るのは、生まれて初めてだ。

「これは、どこのショコラティエの方が作ったものなんですか?」

「えっ、チロルチョコ知らないの!?」

男性は驚き、美桜は素直に頷く。これは、美桜の運命を大きく変える出会いだった。