昔の映画は芸術であった、今の映画は何だろう。
 昔の映画には情緒があった、今の映画には何があるだろう。
 フィルム映画を見終わってから、あるいは現代映画を見ているときの私は、こういったことを考えている。
 映画が大衆の数少ない娯楽であった戦前と違い、今は手元に娯楽がある時代である。
 方法次第でどんな娯楽にでも触れられるし、自分で娯楽を作り出すこともできる。
 近年映画市場に落ち込みがあると言われるが、それは仕方のないことなのかもしれない。
 しかし、それでも私は、空虚な内容、CG頼りの演出、興行収入が先行した作品は歓迎したくない。
 私の趣味が普通でないことはよく分かっている。
 誰もが好む作品を敬遠し、誰もが退屈だと思う媒体に魅力を感じている。
 私はしばらく、いや、一生それでいたって良いと思う。
 偏屈だと言われようと、珍しいという目で見られようと、一人の芸術を嗜む人間として、私の好きな映画を、私の好きな芸術を、心ゆくまで目一杯楽しみたいものである。