そう思っていた矢先、巫女の喉が嗄れた。


少し調子が悪いと言って咳を重ねるので、医者を呼び、皆で慌てて神殿中を調べたところ、花には組み合わせが悪いものがあるらしい。


国の守りの要である巫女に掠れた声で歌を歌わせるなど、知らなかったでは済まされない大失態だった。


「おそばについていながら、私の不勉強で御身を危険に晒しました。申し訳ありません」

「いいえ、歌まもりさまはわたくしを自由にさせてくださっただけです」


寝台に横たわりながら、巫女がゆるゆると首を振る。


もう花は片付けたものの、言葉の合間にときおり引きつれた音が挟まり、まだ咳が残っているのが痛ましい。


この律儀な巫女があまり顔を上げなくていいように、許可を取ってから、寝台のそばに椅子を引き寄せて座る。


こんなときまで目線を合わせる純粋な一生懸命さが、巫女の若さを浮き彫りにする。幼いほどと言い換えてもいいくらいだった。