ペタ、ペタと足音が鳴る。

冷えた廊下が足を突き刺しているように
感じた、いつもは走りながら笑えるのに。

紗羅もいつもの元気はかけらもなく、
黙って前に進むばかり。

するともうすぐ職員室寸前の所で
紗羅は立ち止まり、
私に向き直ってこう言った。


「共犯者は艶子だったんだね」


私は黙って頷く。
何か言葉を言って仕舞えば、この事実が
間違いになってしまうような気がして。

多分送られてきた写真に艶子がいなかった
ことで察しがついたのだろう。

紗羅はこちらに温もりがありながら棘のある視線を送り、ゆっくり口を開いた。


「艶子を恨んでる?」

『恨んでるわけ無い』

「じゃあなんかで例えてみてよ、
そんなんじゃわかんない」

『3cmの隕石が私の家の屋根ぶち壊して
母さんに当たるぐらい無い』


まずそんな状況ないけどね。

と言い再び地面を踏みしめる紗羅。
表情には少し笑みが戻っている。

ほんの少しだけ、日常に戻れた気がしたが…

何故こんな事を聞いたのか。
大体は想像できるけれど、
心の奥底にある彼女の本心は読み取れない。


私は艶子を恨まないし、
未来永劫そんなつもりは毛頭ない。

鉄パイプが当たる寸前、
彼女の唇の動きが、見えてしまった。






「き ら わ な い で」