深呼吸をしもう一度紙に目を向ける。

そしてまた、小さな会議が始まった。


「英語は日本語に、
日本語は英語に変えるんだよね」

「多分。話すはトーク、
題名は…タイトルで、赤がレッド。
peopleが、なんだろう」


話が進まないと言えば嘘になる、
しかし徐々に進むこの作業こそ、
たとえ回り道に見えても一番の近道なのだ。


「…もしかしたらさ、
peopleは『みんしゅう』なんじゃないか?
これだったら頭文字がちゃんと
『し』になるし」


俺の意見を達筆な字で書き留める遥。

右上が死体なのは間違いない。
だったら左下の一文字目が『み』で
三文字目が『と』になる。

でyouがあなたになるから
二文字目が『な』になって、

ってあれ?


(もしかして)


急いで服を確認する。
そうだ、この髪の毛や青の上着、




俺だ。

ご丁寧にジーンズの色もこの明るさも
そっくり。

そんな俺の挙動に周りの人も意図を
勘づき始めたらしい、

一足先に気づいた紗羅は暗い空気を
ぶち壊すように腹を抱えて笑い始めた。


「ふっ、あはは!はは!!あー、
めっちゃ笑えてきた。答えは近かったんだ」

「よう、答えになった気分はどうだ」


軽快な笑い声に、俺の背中を叩く実。

最悪だよと呟けば同情するように
「次があるさ」と言われてしまった。

次はもう来ないで欲しいんだけどな。