紗羅の持っていた
スマホはライン以外何も入っていない。

普段だったら「もうふざけんなってー」と
戯けて笑うはずなのに、今だに表情は暗い。

私も感染するようにどんどん恐怖の気持ちが膨れ上がってくるのがわかった。


「力を合わせればもしかしたら
ここから出られるんじゃ…」

「…犯人が“複数人”いる場合もあるからね。どこかの犯罪組織という可能性もあるし...」

「なにより渡くんは
今相手が簡単に殺せる状態にある。

この教室も密室だし、睡眠ガスを撒かれたら出来ることなんて何もないから…
まずは渡くんを生かすことに専念しよう」


遥の意見に、艶子がそう答える。

でも遥の意見にも賛成できる。

なんと言ってもこの教室、
ガムテープが貼られているのは外から見てもおかしいし、

待っていれば警察が助けに来るだろう。

それでも、その間に渡が殺されるという
可能性の方が高いため、危険すぎる。


そして、
待ち望んでいない通知音が鳴り響いた。



『10分経ちました、それでは開始します!
注意事項はひとつだけ、
タイムアップとルール違反は“連帯責任“で
渡くんとはさようならになってしまいます。

気をつけてくださいね。

ではまず、教卓の中に紙、右から三番目、
前から二番目の席にペンが入っています。
5分以内に取ってきてください。』