「いや、魔眼が反応しなかったし、桃井がなにか言ったのは呪いと関係ないし……。えっと、ごめん」

 咲也くんは急に、あたふたした。

 反応がかわいらしくて、ちょっとからかってみたくなったり。

「咲也くんって、すっごくモテるのね」

 ジト目で言うと、頬をかく咲也くん。

「そう……かなぁ?」
「そうだよ」

 わたしがぷいっと横を向くと、咲也くんはクスッとした。

「もしかして……一千花センパイ、ヤキモチやいてくれたの?」

 思わぬ反撃に、「えっ」と固まるわたし。

 ドギマギして、言葉が出てこない。

「スゲーうれしいんだけど」
「そ、そんなわけないでしょ」

 咲也くんをじろりとにらんで否定したけど、声がうわずってしまう。

「はいはい、そういうことにしときます」

 いたずらっぽい笑みを浮かべる咲也くん。

 もうっ! ホントにヤキモチなんて……やいてなかった……とは言えない。

 わたし、やっぱり咲也くんのこと……。


「おれにとって大切な人は、一千花センパイだけだから……」


 咲也くんの左手が、わたしの右手をつつみこむ。

 わたしはだまったまま、ぎゅっとにぎり返した。

 バスがゆれるたびに、わたしと咲也くんの肩がくっついたり、離れたりして。

 でも――。

 終点まで、手と手は、固く結ばれたままだったんだ。