「一千花センパイはきれいだ。かがやいてるよ」


 中庭で再会したとき、そう言ってくれたけど、咲也くんこそ、かがやいてる。

 それにひきかえ、自分は……。

 なにも変わってない。成長できてない。

 ずーんと沈みかけたとき、さあっと涼しい風が吹きぬけていった。

 ()(あつ)い雲が出てきて、日差しも弱まっているし、夏の予告編は終わったのかもしれない。

「ちょっと涼しくなりそうだね。暑いままだったら、屋外デートは厳しかったよなぁ」
「どこに連れていってくれるの?」

 わたしがたずねると、咲也くんはニカッと白い歯を見せた。

「開花パークだよ。……いいかな?」
「わあっ! ひさしぶりかも。楽しみっ!」
「おれ、一度も行かないまま引っ越しちゃったんだ」
「わたしもそう何回も行ってないよ。近いから、かえって行かないんだよね」

 開花パークは、町の中心部からは外れたところにあって、広大な敷地のなかで、四季折々の花や木を楽しめる(いこ)いの場所なんだ。

 観光客にも人気のスポットだけれど、町の住人には「いつでも行ける場所」だから、逆に、そんなに行かなかったりする。

 足をのばすキッカケができてうれしいし、今はどうなってるのか見てみたい。

 とりあえずわたしたちは、駅前のバス乗り場まで行った。