「芽依さん、ありがとうございます。お借りします」

 ぺこりと頭を下げるわたし。

「一千花センパイ、そろそろ行こうか。めいめい、ありがとね」

 咲也くんにうながされて、店を出る。

「楽しんできなよー!」

 送りだしてくれた芽依さんに手をふり、わたしはまた咲也くんと歩きはじめた。

 どちらからともなく、ふたたび手をつなぐ。

 それが当たり前みたいになってきたけれど、やっぱり照れくさい。

 わたしは、ドキドキしながら口をひらいた。

「芽依さん、とっても素敵だね」
「まあ、面倒(めんどう)()がいいタイプだね」
「咲也くん、めいめいって呼んでるの?」
「ああ、そういえば、昔からそう呼んでるなぁ」

 実は――お店の裏で着がえたとき、芽依さんとの会話で、咲也くんの話題になったんだ。

「咲也って、昔は気が弱くてさ、いつもオドオドしてたんだよ。友だちも、ぜんぜんできなかったみたいだし……。でも、大きく成長して帰ってきたよ。一千花ちゃんみたいな、かわいいセンパイをデートに誘う、大胆な子になるとは思いもしなかったけどね」

 そう言って笑う芽依さんは、なんだかうれしそうだった。

 咲也くんはホントに生まれ変わったんだ。

 自分の気持ちをストレートに表現できる強さがある。

 横にいてもらえると、なんだか安心するから、頼りがいもあるんだと思う。