「いらっしゃいませ」

 奥から出てきたのは、二十代前半くらいの、美人なお姉さん。

 ロングの髪に、ゆるふわなパーマがかかっていて、前髪パッツン。シースルーの入った黒のブラウスに、茶色いドット(がら)のスカートを合わせている。

 スタイルもいいし、雑誌にのっているモデルさんみたいだ。

「なんだ、咲也か」

 お姉さんは営業スマイルをくずして、くだけた調子で咲也くんに話しかけた。

「つれてきたよ、お客さん」

 咲也くんが言うと、お姉さんはわたしを見た。

「ああ、この子がアンタの彼女?」
「そうなる予定……かな」

 にんまりする咲也くん。

 ええっ!? なにを言ってるの!?

 てか、あなたたちは、どういう関係!?

「おれのイトコなんだ」

 謎はすぐに解けた。

乙黒(おとぐろ)芽依(めい)だよ。よろしくね」

 ウインクされて、わたしもあわてて自己紹介。

「あっ、愛葉一千花です。こちらこそ、よろしくおねがいします!」
「一千花ちゃんね。かわいい! 咲也、アンタにはもったいないよ」

 咲也くんの腕を、ひじでつつく芽依さん。

「かもね」

 咲也くんはクールに返すと、わたしに向きなおった。

「一千花センパイ。おれ、着がえてくるから、ちょっと待ってて」

 と言って、奥に引っこんでしまった。

 着がえてくる……? ここって、咲也くんのお家……?