「じゃあ、それって……」

 固くにぎりしめられた、わたしと咲也くんの手を、いぶかしげに見る桃井さん。

「愛葉……一千花センパイは、おれの大切な人なんだ。つきあってるとか、つきあってないとか、そんな次元、越えちゃってるんだよな。それだけ深ーい仲なんだ」

 どこか遠い目をして言うと、咲也くんは、わたしの手を引いて歩きだす。

「うおー。やっぱり熱いな!」
「やるな、一年坊!」

 赤松センパイと、高梨センパイがはやしたてる。

 蓮くんは、だまってわたしたちを見つめていて。

「お先に失礼します!」

 咲也くんは頭を下げて、蓮くんたちの横をすりぬける。

 あとにつづいたわたしと、蓮くんの視線がまじわった。

「…………」

 さびしげな目でわたしを見ていたから、なにも言葉が出ないまま、通り過ぎてしまった。

 蓮くん、どうしたんだろう……?

 ぜったい、からかってくると思ったのに。

 咲也くんは最後に、小百合センパイにあいさつした。

「門倉部長、お先に失礼します」
「きゃああああ! ほら! ほら! 私の妄想どおりでしょ、愛葉さん! スズランには毒があるのよ! キケンだわっ!」

 体をくねらせ、商店街に響きわたる音量でさけぶ小百合センパイ。

 その声が聞こえなくなるまで、わたしは顔を上げることができなかった。

 わたしの顔は、きっと真っ赤だと思う。

 もうワケがわからぬまま、咲也くんと手をつないで、商店街を進んでいったんだ。