わたしたちの恋、NGですっ! ~魔力ゼロの魔法少女~

 小百合センパイの鼻息がくすぐったい。

「あの……近いんですけど……」

 小百合センパイは、さらにわたしの両肩をつかみ、ゆらしはじめた。

「あなたに恋のライバル出現じゃないの! でもね、私の妄想では、スズランとあなたの距離は、今日、ぐぐっと縮まるのよ! がんばりなさい!」
「はわわわ……」

 スズラン……?

 ああ、咲也くんのことね。

「ちょ、ちょっと、落ちついてくださーい」

 やっとの思いで、体ゆらし地獄から逃れる。

「勝手にヘンな妄想しないでくださいよ」

 ぶつくさ文句を言っていたら。


「恋のライバルって、だれのことですかぁ?」


 声がして、ふり返ると、すぐそばに桃井さんが立っている。

「あ、えっと、なんでもないわ」

 ごまかそうとした小百合センパイには目もくれず、にこにこしながら、わたしにたずねてくる桃井さん。

「愛葉センパイって、おつきあいしてる男の子いますか?」

 この子、目は笑ってないっ!

「いないけど……」

 わたしは目を泳がせながら、そう答える。

「そうですかぁ。乙黒くんも、おつきあいしてる子はいないらしいんですよね」
「…………」

 なにを言いたいんだろう?

「あたし、乙黒くんが気になってるんですよね。愛葉センパイにおねがいなんですけど、あたしが彼とつきあえるよう、応援してくれませんか?」