◆
休憩が終わっても、桃井さんは帰らなかった。
結局、助っ人として、作業に参加することになったんだ。
――桃井心音さん。
咲也くんのクラスメイトで、里桜が言ったとおり、陸上部だった。
桃井さんは、咲也くんのとなりにピッタリくっついて、離れようとしない。
「あちゃ~、完全にロックオンされてるね、乙黒くん。最初からこれ狙いで来たのかもね。偶然、商店街を通りかかった風をよそおってたけど」
あきれたように小声で言う里桜。
さっき、咲也くんと目が合った。
困り顔で、助けを求めるような感じだったけれど、わたしはそっけなく目をそらしたんだ。
あれ? わたし、イライラしてる?
離れたところから、笑い声が聞こえてきて、そちらを見やると。
蓮くんが、一年生の女の子たちに囲まれて、楽しそうに作業している。
鼻の下を伸ばしちゃって、まあ、みっともないったら。
昔、「おれには空手があるから、硬派でいくぜ」とか言ってたくせに。
咲也くんも、蓮くんも、モテモテで結構ね。
わたしには関係ないけれど、どうしようもなく胸がずきんと痛む。
「愛葉さん!」
わたしに向かって猛ダッシュしてきたのは――小百合センパイ!
「きゃっ!」
ぶつかるかと思って、のけぞるわたし。
ギリギリで急停止した小百合センパイは、ぐっとわたしに顔を近づけてきた。
休憩が終わっても、桃井さんは帰らなかった。
結局、助っ人として、作業に参加することになったんだ。
――桃井心音さん。
咲也くんのクラスメイトで、里桜が言ったとおり、陸上部だった。
桃井さんは、咲也くんのとなりにピッタリくっついて、離れようとしない。
「あちゃ~、完全にロックオンされてるね、乙黒くん。最初からこれ狙いで来たのかもね。偶然、商店街を通りかかった風をよそおってたけど」
あきれたように小声で言う里桜。
さっき、咲也くんと目が合った。
困り顔で、助けを求めるような感じだったけれど、わたしはそっけなく目をそらしたんだ。
あれ? わたし、イライラしてる?
離れたところから、笑い声が聞こえてきて、そちらを見やると。
蓮くんが、一年生の女の子たちに囲まれて、楽しそうに作業している。
鼻の下を伸ばしちゃって、まあ、みっともないったら。
昔、「おれには空手があるから、硬派でいくぜ」とか言ってたくせに。
咲也くんも、蓮くんも、モテモテで結構ね。
わたしには関係ないけれど、どうしようもなく胸がずきんと痛む。
「愛葉さん!」
わたしに向かって猛ダッシュしてきたのは――小百合センパイ!
「きゃっ!」
ぶつかるかと思って、のけぞるわたし。
ギリギリで急停止した小百合センパイは、ぐっとわたしに顔を近づけてきた。


