「なにがよ?」

 わたしは、口をとがらせながらたずねた。

「一千花、園芸部で楽しくやってるみたいだからさ。ほら、バスケ部に誘ったの、あたしじゃん?」
「里桜……」
「小六に上がったころかな、一千花の笑顔がへったような気がしたんだよね。もちろん明るいし、元気だけど、本当の笑顔が見られなくなったから……」

 ちょうど、魔神リュウトとの戦いが終わって、魔力ゼロになったときだ。

 里桜は、わたしの変化を感じとったんだ。

「元気になってほしくてさ、一千花が運動オンチなのはわかってたけど、いっしょにバスケやろうよって誘ったんだ。でも、うちのバスケ部、本格的すぎるんだよね。結果的に、一千花を悩ませちゃったよね。ごめんね」

 わたしは首がとれそうになるくらい、ぶんぶんと横にふった。

「ううん! 里桜があやまることない! わたし、誘ってくれて、うれしかったんだから! ホントだよ? そりゃあ、ついていけなかったけど、入部したことは後悔してない。何事(なにごと)も、やってみなくちゃわからないじゃない? 今は、園芸部で充実してるし、気にしないでね」
「一千花……」

 里桜は、ずっと気にしていたんだね。

 わたしも、言わなくちゃいけなかったことを、やっと言えた。

 胸のつかえがとれて、すうっとしたよ。

 わたしたちは笑いあって、いつものふたりに戻った。