「あのふたりは、魔物にあやつられたというより、あのとき、あの場所で、ああするよう仕向けられたというべきかな。まあ、呪いが発動すると、おれの魔眼がうずくから、助けに行けたんだけどね。わすかな魔力でも感じとれるらしい」

 魔眼のおかげだったんだ!

「魔物たちには脅しをいれてやったから、呪いは弱まったけどね」
「脅しって……?」
「壁ドンしたとき、『おれにとって、一千花センパイは大切な人だ』って言ったでしょ?」
「う、うん」

 あのときの光景がありありと思いだされて、かーっと顔がほてってくる。

「アレ、おれの一千花センパイに対する本心だけどさ、魔物たちに対する警告でもあったんだよ。『おれの大切な人を傷つけると許さない』っていうさ」

 いたずらっぽい表情になる咲也くんに、どきんと胸が高鳴る。

 もうっ、咲也くんてば、どこまで本気なんだか。

「ふーん、壁ドンねぇ。一千花、そんなこと教えてくれなかったけど、お熱い関係になってたのね」

 じとーっとした目つきでわたしを見てくるブルームス。

「わわっ! ちがうってば! わたしは恋してないから! 言い伝えにそむくようなことはしないからっ!」

 あわてて、手をぶんふんふると、咲也くんは首をかしげた。

「言い伝え……?」
「あっ、なんでもないよ! なんでもないの!」

 必死にごまかすわたし。

 すると、咲也くんは、きりっと真剣な表情になった。

「それにしても……ブルームスがまだ人間界にいるということは、一千花センパイが魔力ゼロになって、ブルームガーデンへのゲートがひらけなくなったせいだよね?」
「それは……」

 どう答えればいいかわからなくて、口ごもってしまう。