ブルームスは、ゆっくりと前足を組んだ。

「まあ……ね」

 意外な答えに、思わず声が大きくなる。

「ブルームス、気づいてたの!? どうして教えてくれなかったのよ!」
「一千花に余計な不安を与えたくなかったのよ。咲也くんが言ったとおり、大したことない魔物の呪いだし、一千花には花の女神さまの加護(かご)があるもの。呪いからは守られるわ」
「加護……? ホントに?」
「うん、だいじょうぶ」

 ブルームスのやさしい笑顔を見て、「よかったぁ」と、やっと息をつけた。

 そこへ、咲也くんが口をはさむ。

「――ただ、不安にさせるわけじゃないが、おれが開花町に帰ってきたことで、魔物たちがいきおいづいた。呪いも強くなってしまった。だから、おれは一千花センパイを守ろうと決心したんだ」
「あ……」

 咲也くんに助けられた場面が、頭によみがえる。

 汗ですべって、転びそうになったとき。

 椿センパイに責められて、泣きそうになったとき。

「もしかして……アレって、呪いの影響?」

 わたしがたずねると、咲也くんは、こくりとうなずいて、

「あの場所に、御堂センパイが汗を飛びちらせたのも、椿ってセンパイが、あそこまで一千花センパイを責めたのも、すべて呪いのしわざだよ」

 と、きっぱりと言いきった。