わたしたちの恋、NGですっ! ~魔力ゼロの魔法少女~

 咲也くんは、さびしげな表情で口をひらいた。

「これは……魔神リュウガが、自分の息子だという証のために(きざ)んだ印だよ」

 よく見れば、咲也くんの左目には、不思議な()(よう)が浮かびあがっている。

()(がん)とでも言ったほうがいいかな。この眼をつかえば、フツーの人間には見えない、妖精や魔物を見ることができる。だけど――」

 咲也くんは、左目をおさえて、うつむいた。

「今のおれは、もう魔神リュウトじゃない。魔法少女アイカが、魔神リュウガの魂を消してくれたからな。おれは魔力ゼロの、フツーの中学一年生だ。信じてほしい」

 すると、ブルームスが、ふんと鼻で笑った。

「魔眼を持ちながら、フツーですって? そんなの信じられない!」

 声をあらげるブルームスを、ぎゅっと抱きしめる。

「ブルームス。わたしは……咲也くんを信じるよ」
「一千花!」
「信じるというか、信じたいのかもしれないけど……」

 まちがいなく、わたしは魔神リュウガの魂を消したし、罪の意識に苦しむ咲也くんを見たもの。


 ――一千花さんに言われたこと、しっかり考えるよ。


 記憶を消してほしい、とまでねがった咲也くんだけれど、罪を背負って、前を向いて歩いていく決心をしてくれたんだ。