「咲也くんも、わたしのシャンプー当てたじゃん。おかえし!」

 べえっと、舌を出してみせる。

 クスッと、咲也くんが表情をゆるめたから、わたしたちは笑いあった。

 とっても不思議な、この感じ――。

 ふと、咲也くんが、花壇のカモミールのほうへ視線をうつした。

 見れば、大きなチョウが舞っている。

 黒い羽に、青、黄、紫など、色とりどりの模様が入っていて。

「わあ、きれいなチョウチョだね」

 カモミールの花にとまったチョウを見て、感激するわたし。

 だけど、咲也くんは眉根をよせて、じっとチョウを見つめている。

「……どうしたの?」

 わたしがたずねると、咲也くんはチョウから目をはなさないで言った。

「あれはチョウチョじゃない」
「え……?」
「花の妖精だろうな」

 どういうこと?

 とまどっていると、チョウはふたたび、宙を舞った。

 そして――。

「正解だわ」

 聞きなれた声がして、チョウはぼわんと、たちまち姿を変えた。

 宙にふわふわ浮かんでいるのは――ぽっちゃり猫!

「ブルームス!」

 びっくりしたぁ!

【変化】の能力で、チョウに姿を変えてたんだ!

 花の妖精・ブルームスにとっては簡単なことで、生まれつきそなわった能力のひとつだ。

 うれしくなって、わたしはブルームスにかけよった。