わたしは、がっくりと肩を落とした。

「ごめん、ブルームス。わたし……わたし……」
「いいのよ、一千花。残っていた魔力を使いきらなければ、リュウトには勝てなかったわ。それに、一千花とお別れしなくてもいいんだもん。アタイはうれしい!」
「わたしもうれしいよ。でも……」

 ブルームスは、愛する家族が待っている故郷に帰れなくなっちゃった。

 そう思ったら、悲しくて、くやしくて……。

 わたしの頬を、つーっと涙がつたう。

「一千花、泣かないでよ」

 やさしい声とともに、ブルームスの前足が、わたしの頬にそえられた。

 肉球がひんやりと冷たいけれど、心地いい。

「ブルームス……」

 この日、一年にもわたる、魔神リュウト率いる魔界軍との戦いが終わった――。

 開花町を守れてよかった、とホッとしたキモチ。

 これから先、咲也くんが「罪悪感に苦しめられませんように」という祈り。

 そして、これからもブルームスといっしょにいられるという喜びと、ブルームスが故郷に帰れなくなったことへの悲しみ。

 いろんな感情がごちゃまぜになって、わたしは泣きつづけたんだ。