返事を聞くやいなや、咲也くんは、そっと、わたしの髪にふれた。

 細くてきれいな指が、髪にからまり、はなれる。

 それが数回、くり返された。

 こんなところ、だれかに見られたらどうしよう!?

「やっぱり、いいシャンプーなんだね。サラサラだよ」
「そ、そう……? ありがと」

 緊張しているのを見すかされそうで、目をそらす。


「おれ……もっと一千花センパイのこと、知りたいんだ」


 どきっとして、ふたたび咲也くんの顔を見あげた。

 視線がまじわる。

 咲也くん、真剣な表情だ。

 どう返したらいいんだろう?

 わたしも、今の咲也くんのこと、もっと知りたいと思ってる。

 それは、たしかなんだけれど……。

 ふと、甘いアーモンドのような香りが鼻をくすぐる。

 これは、咲也くんの香りだ。

 鼻をくんくんしたのが、バレちゃったみたい。

「……ん?」
「あっ、咲也くんは、アーモンドみたいな、甘い香りがするの……」
「えっ……」

 咲也くんは目を見ひらくと、髪をくしゃっとした。

「なんでわかったの?」

 ええっ!? まさかの正解!?

「母さんが買ってきたボディシャンプーが、南フランスの植物エキスつかってるらしくて……。それが、アーモンドの匂いするんだよね」
「ああ、それで!」
「はずかしいじゃん。そんなの当てないでくれよ」

 うらめしげな表情になる咲也くん。