裏門は、登下校の時間をのぞけば、ひっそりとしている。

 学校に残っている生徒たちがみんな部活動している今、裏門には、静かな時間が流れていて……。

「これが、マリーゴールドの苗だよね?」

 しゃがみこんで、たずねてくる咲也くん。

 わたしはうなずいて、整然とならべられた黒い苗ポットを見つめた。

「そうだよ。春休み中に、種をまいたの」

 すぐに芽が出て、今は葉っぱも四枚になり、順調に育っている。

「あともうちょっとで、花壇に植えかえできるかな。来月には花を咲かせるわ」
「楽しみだね」

 愛おしそうに見つめて、にっこりする咲也くん。

 ホントに花が好きになったんだなぁ。

 なんだかうれしい。

 苗に水やりしたあと、花壇のほうへと移動する。

 スペースの半分は、あざやかなピンク色の花を咲かせているツツジ。あとは、カモミールが控えめに咲いている。

「ツツジはあんまり水やり必要ないけど、最近、雨がふってないからね」

 そう言って、まずはツツジに水やり。

 それから、カモミールのスペースに移動する。

 中央のボリュームのある黄色い花をぐるっと取りかこんでいる、白い花びら。

 カモミールの見た目は、マーガレットに似ている。

 ――と、四月のあたたかい風が吹きぬけて、わたしの髪と、カモミールの花をゆらした。