咲也くんはイイやつ。

 その評価は、きっとまちがってない。

 でも、ブルームスに言われたことが頭にあるし、恋しそうな自分に、必死にブレーキをかけているんだ。

「おーい、乙黒」

 わたしの気持ちを知るよしもない植草先生は、咲也くんを手まねきした。

「はい」

 かけよってくる咲也くん。

「ここはもういいから、裏門の花壇に行ってくれるかな? 愛葉といっしょに」
「わかりました」

 咲也くんはクールにうなずいて、ちらっとわたしを見た。

「じゃあ、愛葉、ふたりで花壇の水やりをたのむ。マリーゴールドの苗にも忘れずにな」
「はーい」

 わざとだるそうに返事をする。

 植草先生は、ふたりっきりにするために、気をきかしてくれたらしいけれど……。

 う、うれしくなんか、ないんだからねっ!

「愛葉センパイ、行きましょう」

 先に歩きだし、ふり返ってほほ笑む咲也くんに、ドキッとした。

 並んで歩きだすと、

「行ってらっしゃーい」

 うっとりした表情の小百合センパイが手をふる。

 また妄想スイッチが入ってるな!?

 なんだかくやしいけど、もう認めなくちゃいけないかも。

 わたし、咲也くんのことを意識しちゃってるみたい……。