いえいえ、わたしたちには、それは深い、深~い因縁があるのっ!

 思わず口をついて出そうになるのを、ぐっとこらえる。

「そうだよ。それなのに、みんなが勝手にさわいでるだけ」
「でも、乙黒が愛葉に好意をもってるのは、事実なんだろ?」
「なんか……そうみたいだけど……。でも年下だし、だいたい、あんなイケメン、わたしなんかとは不釣りあいだよ」
「よくわからんなぁ。恋愛に年なんか関係ないぞ。それに、容姿が釣りあってるとか、釣りあってないとか、どうでもよくないか?」

 マジメくさった顔で言うから、わたしは思わず吹きだした。

「どうしたの、先生? 恋愛トークするタイプだったっけ?」

 植草先生は照れかくしなのか、軽くせきばらいすると、

「おれはこう見えて、奥さんと大恋愛の末、結婚してるんだからな」

 と、ぼそっと言った。

「ええっ! その話、聞きたいっ!」
「いいんだよ、おれの話は。愛葉は、青春の真っただ中なんだから、人を好きになれ。そうすりゃ、自分のことも好きになれるさ。自信もついてくる」

 なんだか、今日の植草先生はかっこよすぎる。

「乙黒はイイやつだと思うぞ。おれは、人を見る目には自信があるんだ」

 得意げに、眼鏡を指で押しあげる植草先生。