「咲也くん! 咲也くんっ!」

 あわててさけぶわたし。

「一千花! だいじょうぶよ、気がゆるんで眠っているだけ」

 そう言って、わたしの肩に乗ってきたのは、花の妖精・ブルームスだ。

 白い毛に、ピンク色の毛がまじった猫の姿――。人間の言葉をしゃべって、自由に空中を飛びまわることもできる。わたしよりずっと頭もいいし、頼れる相棒なんだ。

「ホント!? よかったあ」

 わたしはホッと胸をなでおろした。

 ブルームスが、わたしの頭をぽんぽんしてくれて。

「一千花。ようやく終わったね。おつかれさま……」
「ありがとう、ブルームス! わたし、この町を守りきったよー!」

 うれしくなって、ぎゅうっとブルームスを抱きしめる。

「い、一千花ってば、くるしいよ~」
「あっ、ゴメン!」

 力をゆるめて、ハッと気づいた。

「ブルームス、帰っちゃうの? ブルームガーデンに……」

 ブルームガーデンからやってきたブルームス。魔神リュウトとの戦いが終わったら、帰ることになっていたんだ。

「それがその……アタイもそのつもりでいたんだけど……帰れなくなっちゃった」
「えっ……?」
「一千花がアイカに変身して、魔法でゲートをひらく必要があるんだけど、光の魔石の魔力を使いきったでしょ。もう変身できないし……」
「そんな! ……あっ、ブルームガーデンからお迎えとかは?」

 ブルームスの表情がくもる。

「魔法のステッキが、ただの棒になっちゃったもの。ブルームガーデンとのつながりも切れちゃった」