「なんでもないのよ! 気にしないで!」
「はあ……」

 ぽかんとする咲也くんに、こわばった笑顔を向ける。

「おー、全員あつまってるかぁ」

 のそっと入ってきたのは、顧問の植草先生。

 理科を担当している、眼鏡をかけた先生だ。

 若くて背は高いけれど、細身の体は、枯れ木の枝みたいにぽきりと折れてしまいそうで、どこか頼りない印象を与えてしまう。のんびり屋で、マイペースな先生で。

 小百合センパイが立ちあがり、パンパンと手をたたいて、キビキビした声を出した。

「先生がいらっしゃったわ! 全員、注目!」

 ざわつきがおさまり、空気が一気に引きしまる。

 こういったところは、さすが部長のカンロクだね。

 みんなを見まわして、植草先生がゆっくりと口をひらいた。

「えー、二年生と三年生はこのあいだ、ガイダンスご苦労さまでした。おかげで、新入部員が……六人かな? ようこそ、園芸部へ」

 植草先生はニコッとほほ笑んだ。

「私は、顧問の植草です。まあ、顧問といっても、うちは部長がしっかりしてるから、まかせっきりなんだが……」

 得意げに、胸をそらす小百合センパイ。