「だからさ、わたしももう、アイカに変身できないの。おたがい、フツーの女の子と男の子に戻ったってワケ」

 わたしが苦笑いして頬をかくと。

「…………ボクは、フツーの生活には戻れない。そんなこと……許されない」

 咲也くんはうめくように言って、目を閉じた。

 わたしは咲也くんに顔を近づけて、語りかける。

「咲也くん。自分のやったことを許せない気持ち、わかるよ。ゆっくりでいい。しっかり目をひらいて、前を向いて歩いていこうよ。罪の意識があるなら、この開花町のためになにができるか、考えてほしい。わたしもいっしょに考えるから」

 ハッとしたように目をひらいた咲也くんと、視線がぶつかる。

「不思議な人……だね」

 ぽつりと、咲也くんが言った。

「不思議? そう? ポジティブなことが、わたしの取り柄だもん。あんまり深く考えてないだけかもしれないけど……」

 どちらからともなく、クスッとして、笑いあった。

 そして――。

「残念だけど、ボクは開花町のためには、なにもできそうにない」
「えっ、どうして?」
「父さんの――本当の父さんの仕事の都合でね、神戸に引っ越すことになってるんだ」
「そうなんだ……」
「一千花さんに言われたこと、しっかり考えるよ。神戸に……行っても……」

 咲也くんは意識を失ってしまった。

 えっ!? どうしよう!?