椿センパイは背すじをピンと伸ばして、ズンズンと廊下を進んでいく。

 ふざけて走りまわっていた男の子たちも動きを止め、複数で固まっていた女の子たちもおしゃべりを止めて、何事かと、椿センパイのために道をあけた。

 それほどまでに異様なオーラを身にまとっている椿センパイ。

 体内に、静かに怒りを充満させているように見える。あとは、その怒りを大爆発させるだけ――。

 怒りの矛先は、わたし!

 ふるえがきて、逃げだしたい衝動にかられる。

 椿センパイは階段を下りはじめたけど、うしろをふり向くこともない。

 逃げても無駄だし、とりあえずついていくしかない。

 一階まで下りると、下駄箱を通りすぎ、うす暗い、長い廊下を歩いていく。

 こっちは家庭科室や多目的教室なんかがあるくらいで、昼休みはまるで(ひと)()がない。

 突きあたりを曲がると、閉めきられた扉があって、行きどまりになっていた。

「ここでいいわ。だれも来ないし」

 ようやく立ちどまった椿センパイは、壁にもたれて、腕組みした。

「あの……お話って、退部のことですよね?」

 おずおずとわたしが口をひらくと、椿センパイは舌打ちした。

「それ以外、ある?」

 こ、こわいっ!