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 翌日の昼休み。

「一千花! 椿センパイが呼んでるよ!」

 教室で里桜とおしゃべりしていたら、クラスメイトの女の子が教えてくれた。

「あっ……」

 仏頂面して立っている椿センパイを見て、息が止まりそうになった。

 思わず、里桜と顔を見あわせると、里桜も不安げな表情。

 わたしはゆっくりと立ちあがり、教えてくれたクラスメイトにお礼を言って、椿センパイに近づいていった。

 やっぱり怒ってるのかな?

 ぺこりと一礼して、おそるおそる話しかける。

「あの……退部のことでしたら――」
「ここじゃなんだから、ちょっとついてきて」

 わたしの言葉をさえぎって、短く告げる椿センパイ。

 ひいっ! めちゃくちゃ怒ってる!?

「あの……椿センパイ、一千花がなにか……?」

 いつの間にか、わたしのうしろに立っていた里桜が、心配そうにたずねた。

「いや、ちょっと愛葉に話があるだけ」

 ちらっと里桜を見やると、そっけなく返事をする椿センパイ。

 さらに、「早くしなよ」と有無を言わさぬ調子でわたしに言って、さっさと歩きだしてしまった。

「一千花……あたしも……」

 わたしは、ついてこようとする里桜を手で制して、

「ちょっと行ってくるね」

 と、心配かけまいとほほ笑んで、椿センパイのあとを追った。