「あー、もう最悪っ!」

 わたしはベッドにつっぷして、今日の出来事を思い返していた。

「それは大変だったねえ」

 かたわらにいるブルームスが頭をぽんぽんしてくれるけど。

「……とか言いながら、ちっとも同情してないでしょ?」

 ジト目でブルームスを見やるわたし。

「そんなことないよ~」

 ブルームスは、前足をぶんぶんとふった。

「ホントに最悪だったんだからね。いきなり説明をまかされて、声が裏返るし、頭が真っ白になるしさ。咲也くんのフォローでなんとかなったけど……。そのあともハチャメチャだったよ。小百合センパイは妄想全開だし、蓮くんは空手の演武やっちゃうし……」

 わたしはため息をついて。

「極めつけは、最後のアレだよね。小百合センパイいわく、王子さまとお姫さまみたいになってたらしいよ。みんなにも見られて……。うわー!」

 またはずかしくなって、足をバタバタさせた。

「まあ、ケガがなくてよかったじゃない? ただ……」
「ただ……?」

 神妙な表情になったブルームスの言葉を待つ。

「アタイが心配なのは、一千花が咲也くんを好きになっちゃうんじゃないか……ってこと」
「ええっ! それはナイって言ってるのに~」
「だって、話を聞いてるとね、咲也くん、とってもやさしいじゃない? さりげなく一千花をフォローしてるし、危険な場面でも、さっそうと助けてくれてるし。それこそ、白馬の王子さまみたいじゃない?」