「御堂センパイ」

 新入生の女の子ふたりが、蓮くんのうしろに立っていた。

「ん?」

 声をかけてきた子が、となりの子を「ほら」とうながす。

「あの……これ使ってください!」

 顔を赤らめ、意を決したように、スポーツタオルを差しだす。

 おっと。わたしの出る幕じゃない。

 あわててハンカチを引っこめるわたし。

「ありがとー」

 にこやかにタオルを受けとって、汗をふく蓮くん。

 きゃー! という悲鳴にも似た声があがる。

 気づけば、新入生の女の子たちの多くは、まだ理科室を出ていない。

 今度は、三人組の女の子たちが近づいてきた。

 そのなかの、中央に立っている子が、咲也くんに話しかける。

「乙黒くん。見学会、早く行きましょうよ」
「ああ」

 蓮くんと対照的に、クールにうなずく咲也くん。

 蓮くんも、咲也くんも、やっぱりモテモテだね。

 すると、小百合センパイが、猛ダッシュで理科室に舞い戻ってきた。

「もうっ! 御堂くん! それから新入りの乙黒くん! あなたたちが動かないから、ぜんぜん、みんなが移動しないじゃないの! 見学会のタイムスケジュールは分刻みなのよ!」
「おっと、部長がお怒りだ。みんな行こうぜ」

 蓮くんが動きだすと、女の子たちがぞろぞろとついていく。

「愛葉さん! あなたも早く!」
「あっ、ごめんなさい。今すぐ……」

 小百合センパイにせかされ、走りだしたときだった。