「なんだ? 一千花も、なにかやったのか?」
「わたし、見てるだけでよかったハズなのに、蓮くんの代わりに説明したんだよ?」

 じとーっと蓮くんを見つめて、抗議するわたし。

「あっ、一千花がやってくれたの? わりぃ、それはスマンかった。アガリ症なのに、悪いな」

 蓮くんは手を合わせ、申し訳なさそうな顔になった。

「でも、うまくいったんだろ?」
「まあ……咲也くんがサポートしてくれたからね」

 わたしが言うと、蓮くんは咲也くんに視線をうつした。

「乙黒、サンキューな。コイツ、たよりないセンパイだからよ、これからも力になってやってくれな」

 真剣な表情で、こくりとうなずく咲也くん。

「はい。おれ、愛葉センパイの力になりたいです」

 えっ、ええええええええ!

 なに、その誤解をまねくような言い方!

「おっ、おう。そうか……」

 軽い調子で言っただけなのに、妙にマジメに返されて、面食らっている蓮くん。

 わたしはあわてて口をひらいた。

「それより、空手をやるなんてびっくりだよ」
「へへ、盛りあがったろ?」
「まあ、そうだけど……」

 屈託なく笑う蓮くんの髪から、汗のしずくがぽたりと落ちた。

 園芸部のために、一生懸命やってくれたんだ。おつかれさま。

「蓮くん――」

 ハンカチをわたそうと思ったら。