となりの咲也くんをちらっと見やると、反応に困っている感じ。

「ああいう人なの。ごめんね」

 こそっと言うと、咲也くんは肩をすくめて、

「おもしろいセンパイじゃないですか」

 と言って、苦笑い。

 春だというのに、理科室の空気は完全に冷えきってる。

 新入生たちはドン引きだ。

 うん、わかるよ。

 わたしも最初は、小百合センパイのテンションにとまどったけど、今はもうなれてきた。

「ガーベラも好きです!」

 小百合センパイはスケッチブックをめくり、次のイラストを見せる。

 色とりどりの花を咲かせているガーベラ。

「ガーベラの花言葉は『希望』『前進』。前向きで明るいイケメンを連想しますっ!」

 短髪で、元気みなぎる長身のイケメンも描かれている。

 あー、これは蓮くんがモデルだね。

 小さいころからずっといっしょだから、そう感じないけど、ほかの女の子にとって蓮くんはイケメンらしい。

 そういえば蓮くんはよくモテる。空手バカだけど、女の子にはやさしいし、ワイルドな魅力があるそうで。

 ガラッ!

 引き戸をあけて、三人の男の子が飛びこんできた。

「わりぃ! 遅くなった!」

 なぜか空手着に身をつつんで息を切らした蓮くんと、あとのふたりは、たしか蓮くんの友だちだ。

「ガーベラ! ……じゃなかった、御堂くん! 遅いじゃない! てか、なあに、そのカッコウ!」

 妄想モードを解除して、金切り声をあげる小百合センパイ。