だけど、問題がありまして……。

 こほんとせきばらいをひとつ入れて、話しはじめる小百合センパイ。

「花を育てることは、楽しいです。イケメンを()でている気分になれるからです」

 しーんと静まり返る理科室。

 気にするそぶりもなく、スケッチブックをひらいて、みんなに見せる小百合センパイ。

「私が好きな花は、スズランです!」

 言葉どおり、スズランのイラストが描かれている。

 淡いパステルカラーで色づけされた、とっても上手なイラストだ。

 ただ、スズランの横には、クールなイケメンも描かれていて。

「大きな葉にかくれるように、そっと白い花を咲かせるスズラン。控えめで、クールなイケメンを連想しますっ!」

 小百合センパイのテンションがどんどん高まっていく。

 あちゃー。妄想スイッチが入っちゃったよ。

「ですが、スズランには毒があります。そんなキケンなところも、魅力です」

 顔を赤らめ、体をくねらせると、咲也くんに視線を送る小百合センパイ。

 咲也くんを「入部希望者です」って紹介したとき、小百合センパイ、「創作意欲をかきたてられるわ!」って興奮してたもんなぁ。

 咲也くんがモデルなのは明らかだ。

 小百合センパイは少女マンガが大好きで、将来の夢は、漫画家かイラストレーターなんだとか。

 さらに、イケメンと恋愛する自分を妄想しては、自分だけの世界に入っちゃう人なんだよね。

 だから、小百合センパイにとっては、花をイケメンに見立てるのは、ごくごく自然なのであります。