そう、わたしが咲也くんに恋するなんてこと、あるわけない――。

 宿敵だったという事実は消せないし、彼を倒すためには、魔力を使いきる必要があった。ブルームスが故郷に帰れなくなった原因は、咲也くんにあるんだ。

 わたしはもちろん、ブルームスも、咲也くんにはフクザツな感情があるはず。


 ――咲也くんに対して、なにか文句のひとつでもあるんじゃ……?


 そう聞きたい気持ちはあったけれど、それはグッとおさえた。

 そんな質問をすることは、ブルームスを侮辱することだとわかっているから。

 また寝そべって漫画を読みはじめたブルームスを見つめて、わたしは必死に言い聞かせた。

 とにかく言われたとおり、フツーにしていようって。

 咲也くんとは、同じ園芸部員で、センパイと後輩。

 ただ、それだけ。

 宿敵だったことは、もう忘れよう。