「さっき、君は『ヘンですか?』って聞いたけどさ……男の子がお花を好きなの、ホントに素敵だと思うよ。うちの副部長も男子だし。三年のセンパイなんだけどね」

 話をそらしてみた。

 男の子は「そうですか」と言うだけで、あまり食いついてこない。

「君がお花を好きになったのは、なにかキッカケあったの?」

 今度は、質問してみることにした。

「キッカケ……。おれ、もともと、花は好きじゃなかったんです」

 男の子は、ぽつりぽつりと話しはじめた。

「でも、ある人に出会って、変わったんですよ。おれの価値観がすっかり変わったんです。花を愛せるようになったというか……」
「へえ、素敵な人と出会えたんだね。君の――」

 言いかけて、まだ名前を聞いていなかったことにようやく気づいた。

「ごめん! まだ君の名前を聞いてなかったね。わたしは二年の――」
「愛葉一千花さん」

 さえぎるように言われ、ぎくりとした。

「えっ……どうして知ってるの……?」
「知ってますよ。一千花センパイのこと、よ~く知ってます」

 さっきまでと打って変わって、にやりといたずらっぽい笑みを浮かべている男の子。

「あれから二年たったけど、ひと目見て、すぐにわかりましたよ」