ふたつの必殺技が激突し、その衝撃で大気がふるえる。

 押し勝ったのは、アイカがはなった必殺技のほうだった。

 光の渦が、黒いエネルギー波を打ち消し、リュウトをつつみこむ。

「うわああああああああ!」

 リュウトの断末魔のさけびが響きわたった――。


 やがて、静寂がおとずれて。

 空は雲ひとつない青天になり、どこからともなく美しい花びらが舞い散っている。

 花びらのシャワーをあびて、横たわっているリュウト。

 そのかたわらには、アイカがひざまずいている。

 リュウトの鉄仮面は割れて、顔があらわになっていた。愛らしい美少年だ。

乙黒(おとぐろ)咲也(さくや)くん……だね?」

 アイカが問いかけると、リュウトはこくりとうなずいた。

「ボクのこと……知ってるの?」
「ええ。開花第一小の四年生だよね? わたしは五年生――」

 アイカはステッキをふって、変身を解いた。

 ピンク色だった髪は黒髪へと変わり、腰まであった長さも、肩にかからないくらい短くなった。

 顔つきも、少し幼くなったみたいだ。

 これがわたし――愛葉(あいば)一千花(いちか)の本当の姿。

「やはりね……」
「わかってたの?」

 リュウト――咲也くんの言葉におどろきを隠せないわたし。

「うすうす、わかってたよ。ボクがクラスメイトにいじめられていたとき、助けてくれたでしょ?」
「うん。橋の下で三人に囲まれてたよね? わたし、そういうヒキョーなの大嫌いだからさ、怒って追いはらったっけ。……でも、君がリュウトだったなんてね……」
「意外でしょ? ボクみたいな弱虫が魔神リュウガの息子だなんてさ」