放課後――。

「じゃあ、あたし、バスケ部の練習に出るね」
「うん。わたしは、今日は園芸部の活動やるよ」
「わかった。センパイたちに言っておくね」

 手をふる里桜と別れたあと、わたしは軍手とバケツを手にして、中庭に向かった。

 校舎と校舎にはさまれた中庭は、だれからも忘れ去られたような場所だ。運動場や体育館からは離れているし、普段からあまり人気(ひとけ)がない。

 そこには園芸部が管理している花壇があって、今の時期はアネモネ、ロベリア、フリージア、パンジーなんかが花を咲かせている。

 花壇は学校の敷地内にいくつかあって、どうしても人目につくところの手入れが優先になるから、ここは後回しになりがち。

 雑草が伸びてきたのが気になっていたし、今日、手入れしよう。

 それに、人がいないということは、物思いにふけるには絶好の場所で。

 まさに「秘密の花園」なんだ。

 バスケ部をやめるかどうか、ひとりでじっくり考えよう。

 そう思っていたのだけれど……。

 意外にも先客がいた。

 しゃがみこんで、花壇の花を見つめている男の子。

 真新しい学ランに身をつつんでいるから新入生だね。

「あ……」

 わたしに気づいた男の子が、サッと立ちあがった。

 わっ、背が高い!

 それに……イケメンだ!

 ここにいたよ! ドラマに出てくるようなイケメンが!

 サラサラの髪に、クールな目元。とってもきれいな顔立ちの男の子だ。