「きれいに咲いてくれたね」

 咲也くんがうれしそうに言った。

 学校の中庭――花壇に咲いているのは、ジャーマンアイリス。大きくふくらんだ花びらに、白と紫のグラデーション。

「ドレスを着てる女の人みたいで、かわいいね」

 うっとりしたように言ったのは、わたし。

 ふたりで横ならびにしゃがんで、ジャーマンアイリスを見つめている。

 テュポーンとの戦いから一週間が過ぎた。

 あの日、わたしの家まで送ってくれた咲也くんは、かすかな魔力を感じとっていたらしく……。帰ったフリをして、わたしの家を見張ってくれていたの。なにか異常があれば、かけつけるつもりで。

 だけど、怪しんだ近所のおばさんに通報されそうになって、咲也くんは仕方なくその場を離れたんだ。

 しばらくして戻ってくると、魔力の気配とともに、わたしも家を出たことに気づいた。

 それであわてて、わたしたちを追いかけたの。

 闇空間に引きずりこまれたわたしを助けるため、魔眼の導きにしたがった咲也くん。

 そして――。

 わたしと咲也くんは、テュポーンの核――闇の魔石を、光の魔石へと変えることに成功したんだ。

 闇空間が消しとび、わたしたちは、元の公園に戻ることができた。

 そればかりか、魔石の光をあびたブルームスは、たちまち生命力をとり戻して、すっごく元気になったんだよ!