わたしとブルームスが絶叫すると、咲也くんは髪をくしゃっとした。

「ここまで来られたのは、一千花センパイを目印にできたからなんだよな。――おい、テュポーン! 聞こえてるんだろ? 闇空間を消せよ!」

 見えざる手でつかんでいるテュポーンの魔石に呼びかけると。

「げひひ。だれが消してやるものか。おまえたちは、永久にココに閉じこめられたままなのだ!」

 下品な笑い声とともに、勝ちほこったように言うテュポーン。

「くそっ! 地上になにか目印になるものがあれば……」

 あせる咲也くんの腕を、そっとつかむわたし。

「その闇の魔石を、わたしが光の魔石に変えたら、どうなる……?」
「一千花センパイ……」
「テュポーンは言ったわ。わたしは、花の女神さまに選ばれた、光のごとき存在だって。咲也くんも、わたしのなかに光を見つけてくれた。だから……わたし、やってみるよ」
「一千花……」

 わたしは、ブルームスにうなずいてみせると、咲也くんの手をにぎった。

「でも……わたしひとりじゃキセキは起こせないよ。だから咲也くんといっしょに……光と闇が力を合わせたら、きっとキセキは起こせるっ!」

 こくっと、力強くうなずく咲也くん。

 わたしたちは、空いているほうの手を、闇の魔石にかざした。

「や……やめろ。やめろおおおおおおおお!」

 テュポーンの断末魔が響きわたる。

 黒い魔石から、まばゆい光がはなたれ、あたり一面の闇を吹きとばした――。