わたしたちの恋、NGですっ! ~魔力ゼロの魔法少女~

「こっちには人質がいることを忘れるなよ、乙黒! 魔眼があっても、おまえの体は人間だ! 魔物にふれることは不可能だ!」

 おぞましい笑い声が、闇空間に響いた。

 すると――。

 あきれたように、ふうっと息を吐く咲也くん。

「おれの魔眼をナメるなよ。おまえはもう、一歩も動けない。声も出せない。その汚い舌も、一ミリだって動かせないぞ」

 魔眼の光が強くなったかと思うと、咲也くんの胸から、半透明の腕が出てきたっ!

 その腕は、みるみる伸びていって、テュポーンの舌をつかみ、ポキリと折ってしまった。

 それでもテュポーンは動かないし、声をあげることもなかった。

 本当に、魔眼で石みたいにされちゃったんだ!

 半透明の腕はさらに、テュポーンの胸をパンチして、中に手をつっこんだ。

「【魔神の見えざる手】とでも名づけようかな。魔物にふれることのできる手さ」

 咲也くんが言うと、テュポーンから引きぬかれた手には、黒い石がにぎられていた。

 テュポーンの核――闇の魔石だ!

「これをとられると、肉体は滅びるだけだ」

 まさにその通りで、テュポーンの体は、黒い霧となって散った。

 同時に、ブルームスをとらえていたカゴが消えて、わたしをはりつけにしていた十字架も消えたんだ。

「きゃあ!」

 落ちていくわたし。