「そうイヤがるな」

 ニタニタ顔で、手を伸ばしてくるテュポーン。

 頭に、咲也くんの顔が浮かんで、自然とさけんでいた。

「咲也くん! 助けてっ!」

 すると――。

「一千花センパイ! おまたせ!」

 暗闇をぬけ、走ってきたのは――――。

「「咲也くん!」」

 わたしとブルームスは、同時にさけんだ。

「ま……魔神リュウト!? なぜここにいるーーーーっ!?」

 驚がくするテュポーン。

「その呼び名はとっくに捨てた。おれは、乙黒咲也だ。忘れるんじゃねーぞ」

 にやりとする咲也くん。

 約束どおり、咲也くんが助けにきてくれたんだ!

「バ……バカな……。ここは地中深くの闇空間。フツーの人間に入ってこられるはずはないっ!」

 うろたえるテュポーンを、鼻で笑う咲也くん。

「おれはフツーの人間には戻れなかった。この魔眼があるからだ」

 咲也くんは、紫色の光をはなっている左目を指さして、

「力が日増しに強くなってる。一千花センパイを守るためには力が必要で、その求めに、魔眼が応えてくれている」

 と言いはなった。

「魔石もないのに……。 なぜなんだ!?」

 テュポーンがさけぶと、咲也くんは言葉をつづけた。

「おれは、北海道で魔女に会った」
「魔女だと!?」

 ――え? 魔女って言ったの、咲也くん?