「おまえをここに連れてくる役目は果たしてくれた」

 魔石のカケラは、力を使い果たしたらしく、消滅してしまった。

「もう用済みだがな」

 そう言って、蓮くんをふみつけるテュポーンに、わたしはキレた。

 恐怖よりも、怒りが勝ったんだ!

「その汚ない足を、蓮くんからどけなさいっ! わたしは……おまえをぜったいに許さない!!」
「一千花の言うとおりよ! アタイも怒ったよ! こんなものっ!」

 わたしは縄から逃れようと必死に暴れ、ブルームスはカゴにかみついた。

「わははは。そんなことをしても無駄だ!」

 テュポーンはあざ笑い、わたしに近づいてきた。

「安心しろ。おまえに復讐するつもりだったが、オレさまは考えを変えた」
「えっ……?」
「オレさまと結婚するのだ。花嫁になれ」
「………………は?」
「おまえは花の女神に選ばれた、光のごとき存在――。光と闇がまじわるとき、災いがもたらされるという言い伝えがあってな」

 ブルームスに教えてもらったやつだ!

「最高ではないか! 地上に災いをもたらし、オレさまが魔界軍の新たなリーダーとなるのだ! おまえはオレさまの子を産め。強力な魔物……あるいは魔神が生まれるかもな」

 ええええええええええっ!

 冗談は、そのおそろしい顔だけにしてっ!

 全身がぞわぞわして、不快感MAX!