目をひらいたとき、わたしは暗闇のなかにいた。

「一千花! 一千花!」

 必死に、わたしに呼びかける声。

 そちらに目をやると、黒いカゴに閉じこめられたブルームスが、心配そうにわたしを見つめている。

「ブルームス……」

 あたりを見まわす。

 黒い炎がゆらめくタイマツが、空間を弱々しく照らしている。

 わたしは、自分の状況をたしかめて、がくぜんとした。

 巨大な十字架に、はりつけにされてるんだ!

 黒い縄で手足をしばられていて、動くことができない。

「目が覚めたかね……」

 声とともに、闇から、ぬっと巨大な影があらわれた。

 翼が生えた、ヘビのような姿――。

 テュポーンだ!

 わたしが倒したはずの、魔界軍の幹部!

「い、生きていたのっ!?」

 わたしの反応を楽しむように、ニタリとするテュポーン。

「おまえの魔法で、肉体は消滅してしまった。だが、かろうじて、核の魔石だけは消えずにすんだのだ。半分の大きさになってしまったがな……」

 そんな……。生きていたなんてっ!

「魔石だけになったオレさまは、公園の地下深くにもぐり、ゆっくりと肉体を再生させていったのさ。魔法少女アイカ! おまえに復讐するためになっ!」

 テュポーンの体から、怒りの炎が立ちのぼった。

 絶望が、わたしの全身を、心をおおっていく。

 息苦しくなり、ひざがガクガクとふるえてきた。