「一千花! はなれてっ!」

 ブルームスが絶叫した。

「もう遅いわ!」

 勝ちほこったようにさけんだ蓮くんの目が、赤く光った。

「――っ!」

 体が石になったかのように動かない! 声も出せない!

「魔力を失ったフツーの人間と、生命力が弱まった精霊――。体の自由をうばうことは、赤子の手をひねるよりたやすい」

 マズいよ! ブルームスも動けなくされた!?

「さあ、いっしょに来てもらおうか」

 蓮くんが、わたしを抱きしめてきた。

 ふりほどこうにも、指一本も動かせない。

 そのとき――。

 わたしたちに向かって、走ってくる足音が聞こえた。

「一千花センパイ!」

 咲也くん!?

「一千花センパイをはなせえーっ!」

 ふり向くことができないけれど、たしかに咲也くんが来てくれたんだ!

「来たか、魔神リュウト。オレさまはもう、アンタの部下じゃない。命令される覚えはありませんな」

 蓮くんが不敵に笑うと、足が沼にハマったみたいに、沈みこんでいく感覚がした。

「一千花センパイ! おれがぜったい助けに行くから! ぜったいだ!」

 うすれていく意識のなか、咲也くんの声は、わたしに届いていた――。