「いつも送ってくれて、ありがとうね」

 畑での作業のあと、いつものように、家まで咲也くんに送ってもらった。

 今のところ、魔物におそわれたりとか、そういったことはなくて、フツーに登下校デートみたいになってるよ。

 普段だったら、咲也くんは踵を返して帰っちゃうんだけど、この日はなぜか立ちつくしたまま。いぶかしげな表情で玄関を見つめているんだ。

「咲也くん、どうしたの?」

 不安になって問いかけると、

「いや、なんでもないよ」

 かぶりをふった咲也くんは、「また明日ね」と足早に帰ってしまった。

 家に上がってもらえばよかったかな……?

 でも、お母さんと万理花に会わせることになるし……。

 受験が近づいて、家のなかが若干ピリついてきたんだよねぇ。


     ◆


「ただいまー」
「おかえり、一千花。蓮くんが来てるわよ」

 玄関に入るなり、リビングから出てきたお母さんに言われた。

「えっ、蓮くんが!?」
「そうなのよ。ずいぶんとひさしぶりねぇ。背も伸びて、イケメンになっちゃって……」

 なんだかうれしそうなお母さん。わたしが面食いなのは、お母さんゆずり……?

「リビングで待ってもらってるから。万理花と遊んでるわ」

 あわててリビングにかけこむと。

 ソファに横ならびで座り、楽しげな声を出している万理花と、蓮くん。

 対戦型のテレビゲームに熱中している。