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「おはよう、一千花センパイ」

 咲也くんは、わたしより先に来ていた。

 休みあけの朝八時――開花第一公園。

 公園の真ん中にある、巨大なクスノキの下で、咲也くんは待っていた。

「咲也くん、おはよう。一週間ぶりね」

 向かいあう、わたしたち。

 なんだか照れくさい。

「わたしの呪いを消してくれたこと、どうして言ってくれなかったの?」

 じろりと上目づかいでたずねると。

 咲也くんは頬をかいて、

「やっぱりブルームスにはわかっちゃうよな」

 と、苦笑いした。

「まだ用心が必要なの?」

 わたしがたずねると、咲也くんは眉根をよせた。

「呪いは消せたけど、気になることがあるんだ」
「気になること……?」

 こくりとうなずく咲也くん。

「観覧車を止めたり、立て看板を飛ばしたりした、あの強風……。呪いが一時的に、とてつもなく強くなった。あれはザコの魔物のしわざじゃないよ」
「えっ……?」
「強力な魔物のせいだ。厄介だよ。呪いを消しても、そいつはまだ一千花センパイをねらってる」
「まだねらってるって、わかるの?」
「ああ、一千花センパイのことを遠くから見てるからな」
「ええっ!?」

 背中がぞくりとして、あたりを見まわした。

 特に異常はないし、そもそも、わたしには魔物は見えないけど……。