咲也くん、すごい! すごすぎるっ!

 あなたのキスは、まるで……闇の魔物をしりぞける、光の魔法ね。

「うれしいよお!」

 わたしはブルームスをつかまえるや、ほっぺでスリスリした。

「ぐ、ぐるじぃ……」

 うめくブルームス。

「あっ、ごめん!」

 あわてて力をゆるめると、ブルームスは「ふぅ」と息をついて、しっぽをピンと立てた。

「でもね一千花、油断は禁物よ。咲也くんは、一千花に呪いがとけたことを話さなかったし、家まで送ってくれた。いっしょに登下校しようと持ちかけてるし、まだ警戒しているんだわ」
「たしかに……」
「まっ、単に一千花といっしょにいたいだけ……かもね」

 空中で、くるりと背を向けるブルームス。

「光と闇がまじわると、よくないことが起こる……か。言い伝えも、アテにならないわね」
「えっ、それじゃあ……恋愛禁止は取り消し!?」
「まあ、一千花の呪いを消してくれたし、禁止する理由が――」
「ありがとうっ!」

 喜びを爆発させ、またブルームスをつかまえて、頬ずりするわたし。

 今度は、やさしくね。

 わたしたちの笑い声が、部屋のなかで弾けた。

 よかったぁ。わたしの咲也くんに対する恋心はもう、おさえる必要がないんだ。

 ってか。

 ――――あれ?

 わたしと咲也くんって、つきあってるんだっけ?