「アタイがどういうキモチで一千花のナイトに任命したのか、あの子、まるっきりわかってないんだから。勝手に連れまわしたあげく、魔物におそわれて、一千花をキケンな目にあわせるなんて、言語道断よ」
「ブルームス……」
「……まっ、今日という日は、咲也くんにとって特別な日だものね。大切な人と過ごしたいというキモチは理解できるわ。それに――」

 一転して、声がやわらかくなるブルームス。

「それに……?」

 わたしは期待をこめて、次の言葉を待った。

「一千花にかけられた呪いが消えているわ」
「えっ……?」

 ――いま、なんて言ったの?

 全身に、稲妻が走ったかのよう。

 ぽかーんと、ブルームスを見つめるだけのわたし。

「呪いが消えているのよ、完全に!」
「ほ、ホントに……?」

 声がふるえてしまう。

「咲也くんの、おでこにキスがきいたようね。印をつけたことで、魔物も手を出せなくなったのよ、きっと」
「ホントにホントね?」

 ブルームスは、わたしのまわりを飛びまわって、

「ホントだよー! アタイには見えるもん! 一千花の体から呪いが消えてるっ! 完全消滅だよー!」

 とさけび、喜びの舞い!

「やったああああああああ!」

 わたしも飛びあがって、歓喜の声をあげた。