開花中学校の校門には、立派な桜の木がある。

 あたたかい春の風が吹くたびに、うすいピンクの花びらが雪のように舞いおりてくる。

「う~ん、やっぱり桜はいいなあ」

 心のなかでつぶやいて、桜吹雪に目を細める。

 手を広げると、花びらが手のひらにのってきた。

 きれいだけど、なんだか切ない気分にもさせてくれる。和の心というか、そんな二面性がみんなに愛される秘密かな。

「一千花!」

 掲示板のところにできた人だかりから、わたしのほうへ女の子がかけてくる。

 親友の望月(もちづき)里桜(りお)だ。

 名前に「桜」が入っているというのに、桜吹雪には目もくれず、興奮気味にわたしに抱きついてきた。

「あたしたち、また同じクラスになれたよ! 二年B組!」
「ホント!? やったあ!」

 里桜とは小学校からの仲で、バスケ部も里桜に誘われたから入ったようなもの。

 ふたりではしゃいだけど、万理花に言われたことをふと思いだした。

「あっ、そういえば、本屋さんで万理花に会ったんだって?」

 じとーっと、里桜を見つめてたずねる。

「えっ? ああ、うん」

 目を泳がせる里桜。

「ずいぶんと余計なことを話してくれちゃったみたいだけど……」
「あはは。『お姉ちゃん、バスケ部でどんな感じ?』って聞かれちゃったからさ~」
「アンタねえ。ペラペラと……」

 怒りのヘッドロックをかけようと思ったら。