「あの~、もしかして怒ってる?」

 おそるおそる話しかけてみる。

「ええ、もしかしなくても、アタイ怒ってるわよ。とっても怒ってるわよ! 咲也くんと一日デートしてきたのね!?」

 前足を伸ばし、肉球をわたしの頬に押しつけてくるブルームス。

「ひょ、ひょっと、ふぉてぃふいて(ちょ、ちょっと、おちついて)……」

 しゃべりにくいんですけどっ!!

 そのあと、なんとか話を聞いてもらえた。

 今日一日の流れを、順を追って説明したんだ。

 ブルームスにうそは通用しない。昔から、表情や仕草で、何度見やぶられたことか。

 だからすべて、ありのままに話したよ。

 デート中のトラブルは、魔物のしわざかもしれないこと。

 それから――咲也くんと間接キスして、さらには……。

 おでこにキスされたことっ!

「――というワケなんだけど」

 わたしが話しおえても、難しい顔で、目をつぶったままのブルームス。

 気まずい沈黙が流れる。

「あのさ……やっぱり怒ってる……?」

 思いきってたずねてみたけれど、どうせまた、お説教だよねぇ。

 あきらめて、軽くため息をつくと。

「……一千花は恋をしているのね」

 ゆっくりと目をあけたブルームスが言った。

「う、うん……」

 ためらいながら、うなずくわたし。